現役翻訳者のインタビュー:本多由枝さん
 |
File no.018:本多由枝さん
中国語映像翻訳者として活躍中
大学卒業後、大手設計事務所にて主に中国の建築設計・都市計画に従事。退社後は北京留学。帰国後は在日中国人関連の事業を経て、現在、映像翻訳フリーランス。
もっと詳しい質問はMOREへ→
|
質問1 映像翻訳者になる前はどんな仕事をしていたのですか?
建築設計会社の海外営業部門で主に中国と台湾の建築設計や都市計画にかかわっていました。「プロジェクトに従事」なんて聞こえがいいですが、文系出身で建築に関する知識も浅く、おまけにネゴシエーションの相手はタフな中国人。当然ペーペーの私の出番はなく、プロポーザルを作成したり設計料の入金管理をしたり現地でのプロジェクトの登記やら、裏方&管理業務が多かったです。「もっと外に出ていきたい」と会社に見切りをつけ、今やフリーランスなのですが、皮肉にも在宅で作業を行うことがほとんどに加え、休みがないため以前よりも中国に行く機会が減ってしまっています。ただ昔と違って自分で考え自分で判断し、結果もダイレクトに返ってくるのでやりがいは感じます。
質問2 海外での生活のご経験は?
社会人になってから約2年ほど北京に留学していました。大学時代ではなく、中国関係の仕事を経験してからの留学だったので、かなり目的意識を持って海外生活を送ったと思います。北京は中国人数人とルームシェアして楽しかったですね。学生の私は平日の夕飯担当で、バイトのない日は市場で食材を買って教わった中国料理を作っていたものです。そして暇をみつけては各地を旅しました。
質問3 なぜ映像翻訳者になろうと思ったのですか?
建築設計関係の仕事をしながら別の可能性もないかと模索していた時、とある映像翻訳のスクールの存在を知りました。私はかなりの田舎で育ったのですが、父親がイギリスの大学院に留学していた影響で中・高校は洋画や洋楽にやたらハマっており、その当時の記憶がよみがえって「なんとなく」通うようになりました。しかし今のように多言語の講座はなく英語の作品での学習だったため、大学で中国語を専攻していた私にとっては正直しんどい講座ではありました。その後、留学したり転職したりですっかり映像翻訳のことは忘れていましたが、最初の仕事で声をかけてもらったのをきっかけに中国語の映像翻訳という道があったと思いついたわけです。ただ、当時の仕事の状況では時間的に2足のわらじは到底無理だったので、会社はきっぱり辞めフリーランスになった次第です。
質問4 プロを目指すために、具体的にどのように勉強したのですか?
私の場合、英語の作品で勉強していたため、当初は映像翻訳の勉強という以上に、英語の勉強になっていました。徐々に慣れてきてからは英語・中国語を問わず意識して作品を見ていましたが、お恥ずかしいことに具体的に心がけたのは映像翻訳の仕事を始めるようになってからです。
質問5 初めて受けた仕事について教えてください。
ドラマの吹き替え台本用の全訳です。同じ映像翻訳学校出身の英語の映像翻訳者さんに頼まれ、全訳に近い形で翻訳をおこないました。尺合わせや台本の体裁にするのは元請の翻訳者さんでしたが、吹き替え台本は全訳を行った翻訳者の名前も記されるので、台本をいただいた時は非常にうれしかったです。
質問6 現在は、どんな仕事をしていますか?
主にDVD/BS・CSドラマ・映画が全体仕事量の8割を占めます。ほかには特典映像やインタビュー(テープ起こしだけの場合も)、ドキュメンタリーなど。企業のPRビデオや中国語字幕のチェックなどの依頼が来ることもあります。
質問7 映像ソフトやPCなど翻訳環境は日々変化していますが、使用しているPCや字幕ソフト、辞書はどんなものですか?
PCはVISTAとXPの2台を使っており、字幕翻訳の作業はSSTのG1を使って作業することがほとんどです。
辞書は中日大辞典の他に、中日辞典2種類、中中辞典、中国料理用語・官称辞典・警察用語辞典・新語辞典・スラング辞典などなど。集めるのが半分趣味になっていまして、中国に行くたびに書店や批發(卸売)市場を巡っています。
質問8 仕事の時間を確保するために何か工夫をしていますか?
完全に夜型人間で寝る時間まで延々と仕事をしてしまうので、私の場合、1日の中でいかにリフレッシュする時間を確保するかを工夫しています。机に向いっ放しだと体力的にもよくないので、中間にジョギングや料理などの息抜きの時間を設けたりラジオを聴きながらじ~っとお風呂につかったり。また友達と遊ぶ時はお酒が入ることが多いので、夜遅めにセッティングしてもらったり、前の日からあまり寝ずに仕事して遊びに出かけています。でも今年くらいから健康を考えて朝型に変えたいのですが、まだ実現できません。
質問9 では仕事の技術に関して、スキルを磨くために、日々気を付けていることは何ですか?
スキルを磨く時間はなかなかとれないので、字幕・吹き替えの作品を見る暇がなくても日本のドラマ、本、雑誌などでも使えそうな表現を見つけたらメモにまとめています。
質問10 思い出すと顔が青ざめる失敗なんてありますか?
ありがちですが、短いンタビューの仕事をいただき、納期が翌日ということで夜作業していたところ、8割がた終わった深夜にPCが壊れてしまいました。
正直頭が真っ白になりましたが、幸いPCがもう1台あったので、急きょSSTをインストールし再度作業を始めました。おそらく長編の仕事だったら間に合わなかったと思います。以降、マメにバックアップを取り予備のPCは必ず用意するようになりました。
質問11 今後は、どんな作品を翻訳したいですか?
中国の社会を描いたドキュメント作品ですね。また今は字幕翻訳が主なので、吹き替え翻訳ももう少しやれたらと思っています。
質問12 映像翻訳の魅力って何ですか?
自然にストーリーへと入り込むことができ、リズムよく次から次へと字幕がつけられた時の快感です。訳をつけるときいつもあんな感じだとうれしいのですが。
そしてやはりクライアントや担当者の方から「次回もまた一緒にお仕事したい」と言葉をいただけたりドラマや映画を見た知人から「楽しい作品だった」と言ってもらえた時です。この点は映像翻訳に限らずどんな仕事にもあてはまることですが。

現役翻訳者のインタビューのトップページへ