現役翻訳者のインタビュー:花田達矢さん
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File no.003:花田達矢さん 映像翻訳歴 : 2006年翻訳者デビュー 1978年福岡県生まれ。大学入学と同時に上京し、現在埼玉県在住、独身。大学卒業後、映像機器レンタル会社に勤務。4年間、学会・イベントの映像オペレーターを務めた後、映像翻訳スクールにて字幕翻訳を学ぶ。SST講座を経て2006年4月よりフリーランスとして活動中。 |
質問1 現在、どんな仕事をしていますか?
科学捜査に焦点を当てたドキュメンタリー番組をやっています。小説のように奇抜なトリックを使った難事件はありませんが、どのように証拠を発見して犯人と結びつけていくか、地道な捜査に焦点を当てた内容です。推理小説やミステリーは大好きなので毎回楽しみながら見ています。
質問2 映像翻訳者になろうとしたきっかけなどをお話してくださいませんか?
以前から映画が好きでよく見ていたのですが、「映像翻訳」という仕事を知ったのは大学生の時でした。映画では翻訳者の名前って、エンドクレジットの最後の余韻に浸っている時に表示されるじゃないですか。あの、音楽も終わってシ~ンとしている数秒の間に「日本語字幕 ○○」と表示されるのが毎回妙に印象に残って、それから字幕についていろいろと本などで調べました。戸田さんや岡枝さんなど超有名な方の著書や、雑誌「翻訳の世界」を読んだりして、字幕に関する知識も増えていきましたね。練習問題が付いている本もあって、やっているうちに面白い!と思うようになり、割と自然に「将来、字幕の仕事がやりたい」という気持ちが芽生えました。
質問3 初めて受けた翻訳の仕事は?(仕事を頂いた直後の感想 仕事をして見てどうだったか 嬉しいこと、残念だったことなど)
初めての仕事は、音楽ライブDVDのMC部分と特典インタビューの翻訳でした。ついに来た!!と思いましたね。それから納期までの1週間、他のことは一切考えられませんでした。デビュー戦で大コケするわけにはいかないので、もう必死です。運良く職場にはバンドマンや海外在住経験者がいて、いまいちピンとこなかったところを助けてもらったりもしました。
とにかく時間も足りないし調べ物も思うように進まないし、大変だった!という印象しか残っていません。ですので、DVDが発売された時は嬉しかったですね。もちろん予約して買いました(笑)。だけど、正直言うと自分で見てみて恥ずかしかったです。訳がおかしいからという理由じゃなく、何と言うか、まるで自分の裸を見られているような感じがして。きっと全力で取り組んだ証拠なのでしょう。
質問4 差し支えない範囲で結構です新人の1作品の料金は?
最初はスポッティング込みで5000円/10分なので、50分番組として1作あたり2~3万円でしょうか。デビューしたばかりということもあり、登録はまだ1社だけです。
ありがたいことに今はシリーズものをやらせていただいているので、ほぼ毎日稼動している状態です。他の仕事との兼ね合いもあるので1日の稼働時間は4~15時間くらいと幅があります。
質問5 デビューしたての花田さん。お仕事は現在どのようなペースでしているのですか?他の仕事と両立しているのですか?他の仕事との両立のコツを教えてください。
翻訳だけでは食べていけないのでアルバイトもやっています。コツですか?そうですね、優先順位として、まず翻訳を第一に考えることでしょうか。確かにプライベートな時間が削られてしまいますが、今はしょうがないと思っています。中途半端にやってしまうと、自分の実力を伸ばすこともできないし、目標である劇場映画の仕事など到底得られないと思いますし。個々の仕事に関しては、例えば「1日300枚」「1時間30枚」などとノルマを決めてやります。現在の自分の実力では少しだけ無理な設定にしておいて、それをクリアできるようになったら設定値を上げる、というやり方でスピードが上がるように努めています。字幕だと訳文が1枚2枚…と明確に分かれているので、その日の気分に左右されずに規定の枚数をこなしていけて助かります。おかげで時間を効率的に使おうと心掛けるようになりました。
質問6 転職して、映像業界で仕事をするようになって一番戸惑うことは何ですか?
翻訳作業は基本的に自宅でやるので、ちょっとした疑問が出ても、すぐ隣の先輩や上司に聞く…なんてことができないことです。例えば、小数点の表記は半角でよかったかな?とか、スポッティング作業でカットに収めるべきなのか微妙な場合など、些細なことが多いですね。それと金銭的な問題です。安定した給料をもらえるわけではないので、常に腕を磨いておかないと、干されても当然なのがこの世界です。
質問7 では、過去にさかのぼって、翻訳学校で学んだと聞いています。学校では具体的にどんなことを学んだのですか?
最初は映像翻訳の枠にとどまらず翻訳の概略を、次の基礎科では字幕独自のルールを実際に作品を訳しながら学びました。キャラクターに合わせた主語の選定など、翻訳をする上でどのような点に着眼すればよいのかを先生に教えていただきました。実践科になると課題の量も増えて、様々なジャンルの作品を翻訳していきます。主に自分の書いた翻訳について、良い点や悪い点を指摘される授業スタイルで、中途半端な訳だと先生や周りから集中砲火を浴びます(笑)。
質問8 学校の勉強で一番仕事に役立ったのは何ですか?
客観的に自分の翻訳を見る目が養えたことです。それから字幕のルール、翻訳以外の技術(スポッティング)も大切な要素だということがわかりました。
この部分は完ぺきにできた!と思って授業に臨んでも、先生からダメ出しされるということがよくありました。ですので、ひとりよがりな訳にならないよう、時間を置いてチェックするようにしています。第三者から批評されるのは、本で学んだだけでは経験できないことだなと改めて思いました。また、実際に受講してみて分かったのですが、事実関係の裏取りやハコ書き、秒数計算など、翻訳作業以外に結構時間を取られてしまうということが身を持って分かったことも大きな収穫です。
質問9 学校卒業後どのくらいの期間で仕事をいただけるようになったのですか?
トライアルを受験して登録基準に到達してからSST講座修了後、割とすぐにスポッティングチェックの仕事をいただくことができました。翻訳の仕事は、それから2~3カ月後くらいだったと思います。
質問10 トライアルって難しいですか?
翻訳だけのトライアルも、スポッティングだけのものもありました。
SSTの操作経験があればスポッティングも含めた試験が受けられたようです。ただ自分の場合はトライアルの時点でSST講座はまだ受けていなかったので、翻訳のみ受験しました。課題の作品は動物もののドキュメンタリーでしたが、英語の内容はそれほど難しくはありませんでした。難易度で言うなら、授業で取り扱ったコメンタリー作品の方が高かったように思います。ただ時間的に厳しかった。今まで1週間かけて作業していたことを2日間弱でやるわけですから。上手に訳すことよりは、誤字脱字をしない、定められた書式を守るなど、基本的なミスを犯さないように心がけました。こういった個所はベテランも新人も関係ないですからね。
質問11 スキルを磨くために、日々気を付けていることは?
仕事をするときに気をつけていることは?
本を読むことです。そして気になったらすぐに調べること。そのままにしておくと、絶対に後で同じ疑問にぶつかってしまうので。あの時調べておけばよかった…ということになりかねません。ただ、1度だけ調べてもほとんど忘れてしまうのが難点ですが(笑)。
質問12 翻訳学校の勉強以外で日頃から勉強していることは何ですか?
翻訳学校で受講中の時から行っているのは、DVDなどの字幕をそっくりそのまま書き写す作業です。先生はこれを「写経」と呼んでいました。でも仕事が入るとなかなかできないので、1つ1つの作品を通して英文と向き合い翻訳することが一番の勉強になっていると思います。
質問13 活用している資料、辞書、WEBサイトは?
辞書は「プログレッシブ英和中辞典」、「リーダーズ」その他国語辞典など。WEBでは「英辞朗」も使います。また、人名表記には「アルファベットから引く外国人名よみ方字典」も重宝します。意外に地図帳や歴史の教科書も外せません。地図で思い出しましたが、事実関係の裏取りとしてはあまり使えない「Wikipedia」ですが、とりあえずアメリカならどんな小さな町でもヒットするので、場所や属する郡など、ちょっとした情報を知るのに便利です。
質問14 字幕翻訳ソフトについて教えてください。何を使っているのですか?
現在使用しているのはSSTです。
SST以外にも字幕ソフトがあるというのは聞いたことがありますが、具体的な名前は忘れてしまいました。
まだ購入していないので、現在は登録会社でスポッティング作業を行わせてもらっています。自宅にはSSTのViewerがあるので、スポッティング作業後、mdbファイルと見直しリストで翻訳作業を進めるという形です。
SSTを始めて触った時は、字数が勝手に計算されて出てくるので、すごく便利!!と思いました。ストップウォッチで時間を計るとやはり数時間かかってしまうので、その分の時間を他に当てられます。また正確に時間が計れるので字数の大幅な過多・不足も避けられます。
その他、字幕のつながりが悪いかどうかなどもすぐ確認できるのはいいですね。
質問15 好きな映画のことを教えてください。思い出に残る作品はについて教えてください。
ベタですけど「スター・ウォーズ」が大好きです。初めて見たのは小学生の時だったと思いますが、まるでゲームのような展開&映像にワクワクしました。それから我が家にもビデオがやって来て、レンタルで何度も見た記憶があります。多分、あれを見て映画が好きになったのですよね。「スター・ウォーズ」の世界には「フォース」というものがあり、今ではそのままカタカナで通じますが、オリジナル版のビデオでは「理力」(確かルビで「フォース」)という翻訳者・岡枝さんの訳語でした。当時、子供の自分にも全く違和感がありませんでした。すっと意味が分かるような言葉だったのだなと、今思うとたった一語とは言え、その凄さに圧倒されます。
質問16 今後、どんな作品の翻訳をやりたいですか?
夢はやはり劇場映画ですが、まずはノンフィクションでしっかり実力をつけていきたいです。今翻訳している作品の影響もあって、科学捜査に興味を持つようになり、関連する本も自主的に読んだりしているので、同じような系統の作品があればぜひまたやりたいですね。
また、「スターウォーズ」や「トップガン」の影響で、戦闘機が出てくる作品も大好きなのでそういう作品もできればいいなと思います。
質問17 では最後に花田さんにとって、映像翻訳の魅力って何ですか?思いっきり語ってください。
映像翻訳に限らず翻訳とは「日本語では何と言うか」が根本にあるわけで、翻訳者はその架け橋的存在だと思います。話し手のコトバを翻訳者が別の言語に訳すことで、聞き手は話し手の言わんとすることを理解できます。そのコトバによって、相手は泣きもすれば笑いもするし、満足したり怒ったり、悲しみに暮れ、時には激怒する。それってすごいことだと思うんです。映画「ニュー・シネマ・パラダイス」で映写技師のアルフレードがこう言います。「人が笑うのが嬉しい。自分が笑わせてる気がする」まさにこの心境です。だからやめられないですね。自分が訳した映画を見に劇場へ足を運ぶ日を夢見て、これからも頑張りたいと思います。
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デビューしたての花田さんですが、未来のビジョンが明確で、聞いていてこちらが元気をもらいました。映像翻訳業界には、男性翻訳者は少ないと聞いています。男のドラマや、アクションなどで、しびれるような翻訳をしていただきたいですね。


