現役翻訳者のインタビュー:石川克美さん

File no.001:石川克美さん

映像翻訳歴:3年半
客室乗務員から児童英語教師を経て、あこがれの映像翻訳者へ転身

国際線客室乗務員として5年間勤務し、結婚。子育てと児童英語教師の傍ら映像翻訳スクールで字幕や吹き替えを勉強。翻訳会社のトライアル受験に合格し、フリーランスの映像翻訳者に転向。SST(字幕ソフト)の技術を学び、現在ドキュメンタリー、ドラマなど字翻翻訳者として活躍中。

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質問1 最初に、映像翻訳者になろうとしたきっかけは?

映画好きの私にとって、字幕翻訳者は雲の上の存在でした。学校で映像翻訳の仕事には映画の字幕の他にもたくさんの分野や仕事がある事を知りました。CSやBS放送の、ドキュメンタリーや、テレビドラマ、情報番組やDVDなどの特典やコメンタリーです。自分でもがんばれば、翻訳者になれる可能性があるのではと考えて、学校へ行くことにしました。映像翻訳の学校へは、1年余り通い、課題に四苦八苦しながら、友人と励ましあい終了しました。

質問2 翻訳学校ではどんなことを学んだのですか?

字幕や吹き替えのルールや調べ物の仕方などですね。もちろん翻訳のコツも。字幕ソフトの使い方も学びました。調べ物を十分にすることで、誤訳が防げるということは、目からウロコでした。
学校の授業で、字幕翻訳や吹き替えなど、毎週課題を提出しルールや間違いなどを厳しくチェックされたことが、今でもとても役に立っています。
それから、友人ができたことは予想外によかったことです。翻訳家になりたいという同じ気持ちの友人は、孤独な作業を支えてくれました。

質問3 プロになったいまでも交流がありますか?

翻訳学校を終了してからも、トライアルに合格するまでは、勉強会を開いて、仲間と情報交換をしていました。互いに励まし合いボランティアで翻訳をしたり、常に勉強会の友人の言葉が支えになりました。
現在も月2回、勉強会と称し情報交換の場を設定していますが、最近はメンバーも仕事が忙しくなり、数ヵ月に1回ほどの開催になっています。当初は仕事で調べがつかないことや、多言語など、メールで質問して互いに助け合ったりしました。現在は素材翻訳や吹き替え、通訳など仕事の方向も違ってきましたが、翻訳を離れたメンバーも含め、今も大切な友人です。

質問4 客室乗務員や児童英語教師の仕事の経験は映像翻訳に役立ちましたか?

管制塔とのやり取りを操縦士の友人に、スクリプトの間違いで分からなかったワインの名前をソムリエの資格を持つ友人に教えてもらったことがあります。自分自身の経験というより、仕事を通して得た友人が貴重な財産だと言えます。

質問5 初めて受けた仕事について教えてください?

初仕事は映画祭の短編の字幕翻訳でした。初めてスクリーンで、字幕を見て自分の力不足を痛感しました。7分ほどの短編でしたが、短いだけに最後の決めゼリフは、練りに練ったつもりだったんです。“これだ!”と、自分でも気に入っていたのですが、見事に修正されていて落ち込みました。どんなに、自分では良いと思っても、プロの目からみれば、まだまだなんだと、はっきりと自覚しました。そうはいっても、自分の名前をスクリーンでみたときは嬉しくて(嬉しくて)・・・、家族に自慢しました。

質問6 新人ということでの不安は?

仕事が途切れるかとか、何か失敗して次が来なくなる不安はいつでもありますね。でもどの仕事でも、新人に、いきなり大作を任せるはずがないので、不安はあって当たり前だと思います。私は仕事が安定してくるまでは、制作会社や翻訳会社のトライアルは受けまくりました。講習会やセミナーなどにも出来るだけ参加して、情報を得るよう努力しました。家の中ばかりで仕事をしていると、刺激が少ないので、セミナーや講習会に、積極的に参加したことは、仕事のモチベーションを上げるのにも役立ちました。

制作会社や翻訳会社の方々と、いい関係を保ちたいので、一度仕事をいただいた会社にはご挨拶に伺うようにしています。お電話やメールだけより、担当の方の顔が分かっていると親近感が増すので、質問などもしやすく、訪ねていった翌日に仕事をいただける場合もありました。

質問7 ひと作品の料金や仕事にかかる時間は?

現在4社に登録しています。料金は10分8000円からです。アフリカ映画祭やレズゲイの映画祭などは、ボランティアで参加させていただきました。一月平均20日から25日、1日中、仕事が出来る場合は9時間以上。1年では40から50本ほど仕事をしています。

質問8 現在、どんな仕事をしていますか? 

  ドキュメンタリーの字幕やDVDなどの本編 特典映像 テレビドラマの字幕などをやっています。主に英語ですが、他言語のリライトの仕事や、ドラマとドキュメンタリーを同時に翻訳する場合もあります。今はBBCドキュメンタリーシリーズのDVDの字幕やCS放送のシリーズ番組を手がけています。まだ新人ですから、できるだけ仕事は選ばす、何でもやらせていただいています。


質問9 仕事の時間を確保するために何か工夫をしていますか?

まず、ハコ書きとスポッティングを済ませ、最初に全体の流れを見ます。次に納期に応じて、一日のノルマを進め、納品日の前日に見直しとハコ切りの調整をしています。1日のスケジュールは、朝家事を済ませた後、9時半位から午前中3時間、午後4、5時間、夜は眠くなったら寝て、早朝から作業する場合もあります。子育てもひと段落ついたので、家事は、気分転換にやっています。忙しいときには、宅配ピザでも文句を言わない家族の理解と協力に助けられています。

質問10 スキルを磨くために、日々気を付けていることは何ですか?

ドラマや映画、ビデオなど時間の許す限り作品を見ます。その中で、なるほどと思う訳などは参考のためノートに取ったりします。また、自分の好きな分野や得意な分野などの知識を深めることも大切かと思います。それからストレス発散。私の場合は、好きなサッカー観戦で知識も深めつつストレスも発散しています。これは大事ですよ。
仕事をするときに気をつけていることは、いちにもににも、きちんと調べて誤訳をしないようにすることで、気をつけています。また前後の流れが自然になるような言葉を選ぶよう気をつけています。

質問11 思い出に残る作品は?

BBCのコメディードラマ「マイ・ヒーロー」です。シリーズでしたが、演出をして頂く方とも良く話し合って、自分でもとても楽しくお仕事ができました。

質問12 思い出すと顔が青ざめる失敗

SSTを習いたてのころ、スポッティングのお仕事で、手際が悪く納期に間に合わなかったのです。いつまでたっても終わらない。泣きたくなりました。会社の担当者の方に夜遅くまで付き合っていただきましたね。
また、パソコンが突然壊れ、気が緩んでいたのか作業中のデーターのバックアップをしておらず、スポッティングから再度やり直したこともあります。頭が真っ白になりました。

質問13 今後は、どんな作品を翻訳したいですか?

韓国ドラマの「わたしの名前はキム・サムスン」や、FOXの「Huff」など人間味あふれるドラマが大好きです。昨年やらせていただいた台湾ドラマシリーズのリライトで、中国語に目覚め、実は現在中国語も勉強中です。いつか中国ドラマのリライトに役立てたいですね。今後はさらにDVDの本編やドラマのシリーズの字幕などを手がけられる翻訳者になりたいと思っています。

質問14 最後に、石川さんにとって、映像翻訳の魅力って何ですか?

映像翻訳は、素材を過不足なく的確な日本語で視聴者に伝える黒子のような仕事だと思います。私はまだまだ的確な言葉を探すのに四苦八苦の毎日ですが、製作者の意図にぴったりの訳をつけられたときが字幕翻訳の醍醐味ではないでしょうか。ひとりよがりではなく言葉の壁を越えて、見る人が自然にストーリーにのめりこめる字幕をつけるというのは非常に難しいのですが、それだけにやりがいのある仕事だと思います。

ありがとうございました。客室乗務員や英語の教師をしながら映像翻訳者になる夢を実現させた石川さん。翻訳学校で学び、トライアルを受けまくったというバイタリティで、今後も、ぜひ活躍の場を広げて、ドキュメンタリー、ドラマ翻訳と、観客を楽しませる字幕をつくっていただきたいと思います。

ありがとうございました。大学生のお子さんがいらっしゃるようには見えない若々しい石川さん。今後も映像翻訳者としてどんどん活躍の場を広げていってほしいですね。


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